気候政策を支える科学について
国連気候変動枠組条約(UNFCCC、1992年採択)は、「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させること」を究極的な目的として掲げています(第2条)。 また、締約国に対して気候システムに関する研究及び組織的観測の推進・支援を求めています(第5条)。全球気候観測システム(GCOS、1992年設立)は、UNFCCCにおける観測ニーズを受けて、温室効果ガスを含む気候システムの観測要件を定義するとともに、地球観測衛星委員会(CEOS)や世界気象機関(WMO)などの関係機関に対して観測実施の指針を提供しています。 これらの枠組みの下で構築された観測システムと長期観測データは、世界気候研究計画(WCRP)やFuture Earthなどにおける気候プロセスの理解や気候モデルの開発に活用されています。また、炭素循環や気候フィードバックを含む気候システムの監視・理解を支える不可欠な科学基盤となっています。 研究や組織的観測から得られた知見は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)により統合的に評価されます。その成果は、UNFCCCの科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)を通じて政策決定に資する知識として整理され、締約国会議(COP)における国際交渉や各国の政策立案・実施の科学的基盤となります。
パリ協定(2015年採択) の下では、各国は第4条に基づき「国が決定する貢献」(Nationally Determined Contribution: NDC)を策定・提出し、自国の温室効果ガス削減などの目標と取組を示します。また「強化された透明性枠組み」(Enhanced Transparency Framework: ETF、第13条)の下で実施状況を「隔年透明性報告書」(Biennial Transparency Report: BTR)として2年ごとに報告し、技術専門家によるレビューを受けます。さらに、「グローバル・ストックテイク」(Global Stocktake: GST、第14条)では、5年ごとにパリ協定の長期目標達成に向けた世界全体の進捗状況が評価されます。その結果を踏まえて次期NDCにおいてより高い目標水準を提示することが求められており、いわゆる「野心引上げメカニズム」が5年周期で機能しています。 温室効果ガス濃度などの観測データや逆解析による排出量推定値などのモデルプロダクト、さらにIPCCによる科学的評価は、ETFにおける各国の実施状況の把握・可視化に資するものとなっています。 また、GSTにおいては、科学的知見に基づき、世界全体の進捗とパリ協定の目標とのギャップが評価されます。これらの評価結果は、各国NDCの目標水準更新(野心の引上げ)を支える重要な根拠となっており、科学が政策形成を支える具体例となっています。
日本の関係各機関は、観測・研究・評価にまたがる一連の枠組みにおいて、国内外の関係機関との連携を通じて、温室効果ガス(GHG)に関するデータの提供や研究成果の共有に取り組んでいます。さらに、パリ協定の下で構築されてきた野心引上げの各プロセスに対しても、日本の科学的知見やデータが継続的に提供されており、国際的な気候変動対策や政策形成を支える重要な役割を果たしています。
