A3ワークショップ 北京報告
4月の韓国・釜山でのワークショップに続いて、9月下旬に中国・北京において中国側の拠点機関である中国科学院地理科学・資源研究所の近くのホテルでワークショップが開催されました。今回も、日本・韓国からは約10名ずつの研究者が参加しました。日中間の渡航には、この時点ではまだ入国査証の取得が必須となっており、準備作業も非常に手間がかかることとなりましたが、多く日本側研究者から参加希望がありました。今回のA3事業もスタート時はコロナ禍の影響を受けましたが、順調に軌道に乗りつつある状況を感じました。
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ワークショップの前半では中心メンバーに加えて、若手の研究者もそれぞれの研究活動を積極的に紹介しました。最新の未公表の結果を含む発表が多くあり、オープンな学会とは雰囲気の違った「生々しい研究の現場」で交流を進めていこうという意欲を感じさせる若手研究者も存在感を示していました。学生の発表に対して、若手研究者が直接指導するなどといった頼もしい場面も見られました。
ワークショップの後半では、今後の研究交流の中心となるテーマを設定し、それぞれのテーマについて各国でリードする研究者を具体化するという作業を行いました。当面の大きなテーマとして、(1)統合解析に向けたデータ共有体制の整備、(2)数値モデル研究での協力体制の強化、(2)観測研究における環境操作実験などの技術的知見の交換や検証などが挙げられました。また、こうしたテーマを設定した研究交流のほかに、若手研究者をある程度の期間(1−2ヶ月程度)相手国に派遣し、滞在研究を通じて知見や技術の交流のみならず、共同での若手育成を行うプランが検討されることとなりました。こうした若手研究者の相互滞在研究は、今回のA3事業の中で研究者間の連携強化に大きく貢献するものであり、10年以上先の将来を見越した次世代リーダーの能力強化を3カ国それぞれの得意分野を活かして共同ですすめていく取り組みとなります。これについても、3カ国間で情報を共有し、派遣側と受け入れ側で円滑に連携できるように手続き等のノウハウの集積をすすめていくことになりました。
最終日は北京のオリンピック公園にあるフラックス観測タワーの視察を行いました。北京では近年、都市中心部の再整備が急速に進められており、交通システムの整備や電動バス・電動バイクの急速な普及による大気汚染の大幅な軽減を、身をもって感じることができました。都市内部の緑化も積極的に進められており、これには景観の整備だけでなく、汚染物質の浄化、ヒートアイランド現象の緩和、そして炭素吸収などさまざまな機能が期待されているようです。こうした植生の機能の評価の上でこの広大な緑地に整備されたフラックス観測システムは有用なデータを集積しているようです。

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