私たち人間の住む地球の表面には、大気や海洋、そして陸域があり、これら地球表層の環境を保全することは持続可能な人間社会をつくる上で欠かすことができません。しかし、近年では人間活動の影響を受けた気候変動により世界の陸域や海上の気温は長期的に上昇を続けています。将来は、海面水位の上昇や大雨の頻度の増加、さらに熱波や干ばつの被害を受けやすい国や地域では食料生産への深刻な影響も危惧されています。
このような中で、気候変動対策の国際的な枠組み「パリ協定」のもと、世界各国は温室効果ガスの削減に向けて対策をいっそう進めることが求められています。日本においても2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするとの目標が表明され、国を挙げて取り組む決意を示す「気候非常事態宣言」の決議が衆議院と参議院で採択されました。
私たち地球システム領域は、地球環境保全に資する研究を専門的に行う部署として、気候非常事態を乗り越えて持続可能な地球環境を実現するために、最新の科学的知見をもって貢献していきます。
地球システム領域は、国立環境研究所第5期中長期計画の開始に合わせて2021年4月に始動しました。地球システム領域のメンバーは、新たに開始する戦略的研究プログラム「気候変動・大気質研究プログラム」をはじめ、地球システムの現象把握、将来の地球環境変化の予測とリスク評価、それらに必要な先端的計測技術やモデル開発に関わるさまざまな研究課題に国内外の研究者と連携して取り組みます。また、1990年に発足した「地球環境研究センター」が整備してきた知的研究基盤(長期モニタリング、データベース等)は、地球システム領域内のセンターとして新たに位置付ける「地球環境研究センター」が引き継ぎます。温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)シリーズを担う「衛星観測センター」とも密接に連携していきます。
研究活動や成果はこれまで以上に迅速に幅広くお伝えしていきます。科学的知見やデータについては国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等の国際枠組みへ積極的に発信します。以上の活動を通して、持続可能な地球環境と人間社会の実現に貢献していきたいと思います。
2021年4月 三枝信子